CCCコラボは何が駄目だったのか ~シナリオ編~

※この記事は、Fate/EXTRA CCC×Fate/Grand Order スペシャルイベント「深海電脳楽土 SE.RA.PH」に不満を持った人間のものです。十分満足できたよ!という方は読んでも不快になるだけなのでブラウザバック推奨

 

 

ふざけるな、と言いたい。


アニメジャパンでCCCとのコラボイベントが発表された時には、そりゃもう飛び上がるほど嬉しかった。竹箒日記の「このイベントの為にFGOを始めたと言っても過言ではない、できる範囲で全力を尽くした」という発言にまたCCCのあのキャラ達に会えるんだ、FGOではどんな風に動かすのだろう、と期待が大いに高まった。

それが蓋を開けてみればこのザマである。

シナリオや周回前提のストーリー開放ミッション、その周回のテンポを遅らせるデバフスロットの仕様などにも文句は尽きないが、一番許せないのは 

とあるインタビューで「ある意味これのためにFGOを始めたといっても過言では~」と言っていましたが、別にCCCイベントのためではないのです。

というイベント中盤に更新された竹箒日記の、この一文である。

邪推ではあるが、この一文はCCCイベントが旧作ファン、新規FGOファン達のほぼ全てが絶賛していたのなら載っていなかったのだろうと思う。そりゃあどんなクリエイターだって名作しか生み出していない、なんて人はいないだろう。自分が名作だ、傑作だと思って世に送り出した物が世間では酷評を受けるなんてのは珍しい話でもないはずだ。
しかし、だからと言って過去の発言を蔑ろにしていい事には決してならない。それはその言葉を信じたファン達への侮辱だ。


まずシナリオに関しては、キャラクター改変や過去作の設定への矛盾等々色々とあるが一言で言えば「CCCコラボとして出す意味がないものだった」という点に集約される。

このイベントではCCC作中で登場したボスキャラであるBBやアルターエゴ、スピンオフ作品でのオリジナルライバルキャラとして出てきた鈴鹿御前、全ての黒幕だった真ラスボスの殺生院キアラなどが新しく登場したが、彼女らはムーンセルからのコピー、キアラからのサルベージ、平行世界の自分の力を同期させたもの、そもそもCCCとは関係なくFGO世界の聖杯戦争に呼ばれたサーヴァント…。とCCC原作、あるいは関連作品から地続きになっているキャラが一人もいない。イベントの舞台も何らかの事情で電子化してしまったFGO世界の海底油田基地であり、EXTRA及びCCCの舞台であるムーンセル・オートマトンとは一切関係が無い。

EXTRAシリーズの主人公(通称「ザビ」)やそのパートナーサーヴァント、他の個性的なマスターとサーヴァント達の姿も一切見えない。元々EXTRAに登場していたガウェインやロビンも原作とは無関係なキャラクターになっており、EXTRAでのマスターであるレオやダン卿への言及も皆無だ。

それでも出番が無いというのならまだマシで、メインとして出てきた面々は原作との齟齬がかなり目立つ。

自分に絶対の自身を持ち、「あざとい脂肪を一切排して、極限の造形美を追求したカラダ」と自分を称していたメルトリリスは胸の小ささを指摘されると顔を赤くして怒り出すキャラに。

愛憎のアルターエゴとして作られ、束縛の化身と評されたパッションリップはものぐさな性格も鳴りを潜め本能レベルで仲の悪いメルトリリスとも普通に仲良くお喋りする優等生キャラに。

どれだけの罵詈雑言をアンデルセンから浴びせられようとも涼しく受け流していたキアラは「年上お断り」発言だけで狼狽えるキャラに…とどうにもテンプレートなキャラに収まってしまっている。キャラクターの成長、などと体のいい事は言っているが、それに説得力を持たせるだけの描写が無いのでキャラクターがブレているようにしか感じないのだ。

大まかな話の流れも「終局特異点から流れ着いた魔神柱ゼパルが海底油田基地セラフィックスの職員を乗っ取った。しかしゼパルは逆に乗っ取った筈の人間に取り込まれてしまい、その人間のせいでこのままではまたしても世界の危機。それを止めるためFGO主人公(通称「ぐだ」)は現地での協力者達と共に黒幕に立ち向かう」とCCCキャラクターを使う必要性はほぼ無いものである。今回の話は『FGO1.5部番外編』にCCCのエッセンスを加えたものに過ぎない。

今回のシナリオもCCCの要素を抜きに見てみればそう悪くなかったのではと個人的には思う。日記の前半と後半で著者が変わっているという叙述トリックには素直に感心した。だからこそ、コラボ抜きのまっさらな状態で読んでみたかったのだ。

 

まずコラボイベントとは片方の作品しか知らなかったユーザーにもう片方の作品にも興味を持ち、触れてもらうためのものであるはずだ。

それが今回のイベントは1部クリアユーザーに限定され、サーヴァントの育成が数ヶ月、あるいは年単位で行われるこのゲームでは発表時点でFGOをやっていなかったCCCファンはまともに参加することすら出来ない。そして参加したCCC既プレイヤーからしても原作のキャラクター達とのクロスオーバーなどは見られず、そのくせ黒幕はCCCルートをプレイしたユーザーなら一発で分かるようになっていたため、只の焼き直し感が否めない。

逆にCCC未プレイのFGOユーザーからはCCC一周目ではまず辿り着けない黒幕の存在をイベント内で明かされ、これからプレイをしようと思っても大筋のネタバレをほぼ食らった状態でプレイすることになる。更にアルターエゴ達の性格はほぼ別人レベルで改変されているため、CCCプレイヤーがFGOのメルトやリップに違和感を持つように、FGOプレイヤーもCCCのエゴ達に違和感を持つことになる。

 

俗なことを踏まえて有り体に言ってしまえば、今回のイベントは元々人気のあったCCCのキャラクター達を実装しガチャを回させるためのもの、そしてそのために本来なら人間達になびくような事は有り得なかったアルターエゴ達の設定を改変し、ぐだにデレさせるためのものだったとしか思えないのだ。

そもそも恋と愛がテーマであった作品で、はっきりと主人公に「好き、愛している」と好意を寄せていた準ヒロイン級キャラクターを初期化された、成長したという事にして旧主人公の登場しないコラボシナリオ内でコラボ先主人公にデレさせる。というだけでも相当な地雷である。

それがきちんと説得力のある描写で丁寧に展開されたのなら良いのだが、そうではなくただ雑にこれまでとは変わった、と語られる程度でありCCCでの彼女達を知っていればとても納得できるものではない。その中でも特に腹がたったのはこのシーンだ。

 

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ずるいのは、この一言で済ませようとするライターの方だ

 

これはメルトの手が何かおかしい、と気付いたリップにメルトが事の顛末(一周目のぐだとの冒険の様子)をメモリーとして渡し、その内容にリップが涙するというシーンだが、その奇跡の内容というのは終盤になってメルトの回想という形でダイジェストにしか描かれない。

そもそもそういった感情はそれを見た読者の内側から自然と湧いてくるものであってキャラクターに言わせるものではない。それでは只の押し付けだ。

描写には1から10まではっきりと語られたほうが良いものと、ある程度ぼかしてユーザー側に想像の余地を持たせた方が良いものとがある。本来ならば人間嫌いである筈のエゴ達に人間が好きになった、と言わせるようなキャラクターの根幹を覆すような話ならば、1から20まで詳細に描写されてもし過ぎる事はない。それが元の作品からある程度離れたコラボシナリオならば尚の事である。

 

 TYPE-MOONエースVOL.11 P58より引用

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グッドスマイルとは、誰の笑顔なのか

 

 奈須きのこ氏は、原作ではグッドエンドを迎えられなかったキャラもFGOではぐだに対して好感度が上がり、ヒロインとして描こうとしているらしい。けれども大半のユーザーにとっては、そのギャルゲールートというのは何らかのイフが起こり原作主人公と結ばれた姿が見たいと思っている筈だ。

それが丁寧な描写もなくぐだと結ばれたからみんな幸せ、というのは口が悪いのを承知で言えば、いわゆる最低系、介入系二次創作と呼ばれるものそのままではないか。

 

原作ではアルターエゴ達はザビを愛している、幸せにすると言いながらも彼女らの愛し方では決してザビと相容れる事は叶わず、最期まで結ばれる事はなかった。しかしリップはそれでも好きになってもらえるように努力する、と意気込んでいたし、メルトは最期に未練がましくザビに伸ばした腕を「それはさすがに恥知らずというものだわ」と自ら下げ孤高の女王として散っていった。

私はそんな歪ながらも美しい彼女らが好きだったのだ。「人魚姫」はCCCの中でもしばし語られた作品だったが、それを例に取れば今のCCCイベント及びFGO『人魚姫は声を失う事なく足を手に入れ、人魚姫も隣国の王女も陸で介抱をしてくれた修道女もまとめて他の国の王子と結ばれました。これでハッピーエンド』と言っているようなものだ。

 

CCCファンの数はFGOのダウンロード数を考えれば取るに足りないちっぽけな数かもしれない。かつての主人公の事には触れさせずにぐだにデレさせればその方がガチャも回るだろう。収益も上がるだろう。

しかし、今やFGOは売上世界二位を叩き出し、日本のアプリランキングでも上位を常にキープしている『勝ち組』である。だから収益という点ではもうある程度妥協をしてもらえないだろうか。そしてその分を少しでいいから既存のユーザーにも還元するという形でかつてのシナリオ、キャラクターを大切にしてもらえないだろうか。どちらか片方を蔑ろにするのではなく、どちらも納得出来るような形に収められないだろうか。

新規ユーザーも既存ユーザーも、真にみんなが幸せになれる日を、心から待ち望む。